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Structuring VE/PE/E Transactions V-1
Structuring VE/PE/E Transactions V-1_e0087035_711791.jpg第5回目のテーマは、Buyoutのストラクチャリングについて。私がよく仕事でやっていた分野であることもあり、いつもより細かめに2回に分けて連載します(注:日本法の場合でも当てはまる点が多いですが、他の回と同様このまとめはアメリカ法がベースですので日本法の場合とは異なります。)。

Buyoutは取引の内容としては買収(Acquisition)とファイナンス(Debt Financing/Equity Financing)の組み合わせの取引であり、対象会社によって分類すると、①大会社の子会社又は一部門を買収する場合、②非公開会社を買収する場合、③公開会社を買収する場合の3通りがありうる。

今回は①の大会社の子会社又は一部門を買収する場合について

買収に関連する事項


(1) 買収価格(Purchase Price)

名目買収価格の合意があったとしも、次の段階として以下の条件の決定が必要。
 ・現金での支払額
 ・NewcoのDebt・優先株での支払額
 ・買収価格調整(Purchase Price Adjustment)-調整で反映する内容と金額の決定方法→この買収価格調整の仕組みを入れない場合は、コベナントにおいてクロージングまでの対象会社による配当禁止やOrdinary course of businessでの営業の規定を入れることが望ましい。

(2)表明保証(Representations and Warranties)

①表明保証には主に4つの意味がある。
 ・買収価格と契約条件を決定するための基本情報の開示
 ・レンダーへの表明保証のバックアップ
 ・クロージング前のディールのCall offの保証
 ・事後的な損害賠償と極端な場合はディールの取り消しの保証

②別紙(Disclosure Schedule)において例外事項を規定する。→場合によっては補償条項(Indemnification)で再度リスクを売主に戻す。

③主な交渉の焦点は以下の通り。
 ・Knowledge qualifierとMateriality standardをどの程度入れるか
 ・クロージング後の有効期間(Survival period)-Tax、潜在債務、環境責任のみは長めに設定することが多い。
 ・バスケット条項(控除額(deductible)か最低限度額(minimum threshold))
 ・最高限度額(Cap,Ceiling)―具体額又は買収価格の一定割合。good title, taxes, covenant breachは例外とすることが多い。
 ・担保―買収価格の一部のエスクロウ、売主による保証・担保の差し入れ、Seller paperとの相殺等

(3)クロージングの条件

買主が求める主なクロージングの条件は以下の通り
 ・Newcoのファイナンスの失敗(Financing out)
 ・Due diligenceの結果に基づくクロージングの中止(Due diligence out)
 ・許認可の取得の失敗(FTCによるHart-Scott-Rodino antitrust clearanceなど)
 ・第三者の同意の取得の失敗
 ・対象会社のビジネスについてのMaterial adverse change(MAC Clause)

(4)Transition Service

買収後一定の合理的な期間売主に一時的に一定のサービス(IT関連、従業員の給料・厚生関係事務、保険事務、アカウンティング等)の継続を求める契約を合わせて締結することが多い。

(5) 取引の形態

①Asset Sale→(i)相手方の同意が必要な契約、政府の承認が必要な許認可、不動産・自動車・知財等登録が必要なものなどがあり手続きが大変。(ii)州によっては、動産にSales taxがかかる。また不動産譲渡税がかかることもある。(iii)比較的完全なreal estate title insuranceが取れる。(iv)組合契約はAsset saleでも拘束されることがあるので、いずれにしても組合との交渉が必要。

②Stock sale又はReverse subsidiary merger→(i)と(ii)についてはChange in controlの規定がない限りの必要はない。(iii)real estate title insuranceについてはSpecial endorsementを取ることができる。(iv)組合契約は引き継ぐ。

(6)Hart-Scott Rodino Antitrust

取引のサイズが$213.2M以上などの場合にはExemptionに該当しない限りFilingの義務が発生。Waiting periodは通常30日間。

(7)対象会社の潜在債務の遮断

①Asset sale→契約で債務を引き継がないとしても法律上引き継いでしまう場合あり(Bulk sale act、De fact merger and successor liability doctrineなど)。そこで、売主にIndemnificationを求めることになるが売主が健全でないと意味がない。
②Stock sale又はReverse Subsidiary Merger→債務をすべて引き継いでしまうので売主にIndemnificationを求めることになるが、売主が健全でないと意味がない。



デット・ファイナンシングに関連する事項

・メザニンレンダーにはメザニン投資をIncentivizeするためEquity kickerを付与するのが有効。

・メザニンDebtは通常、公募に伴うデメリットを避けるため4(2)又はRegDによるPrivate Placementを利用する。

・Newcoの下にOperating Coがぶら下がり、Acquisition Debtの借り手をNewcoとすると、Structural Subordinationが起こり、Acquisitionレンダーが通常の債権者に劣後してしまうのでこれを避けるストラクチャーが必要(メザニンレンダーも少なくとも通常債権者とパリパス(Pari passu)であることを求めるのが通常)。

・しかし、そうすると、詐害行為取消しのリスク(Fraudulent Conveyance Risk)が発生する。これを避けるには、①Solvency、②Adequate Capital、③Ability of pay debtsの3つの要件を満たす必要があるがいずれも具体的な金額を計算するに際して困難があるので、確実に満たすのは困難。このためレンダーは、Solvency OpinionをIBから取得することを求めることがある。

エクイティ・ファイナンスに関連する事項

・エクイティの内容としては3通りありうる。
 ①普通株→払込金相当額がリスクに晒されることになる。
 ②ワラント→①のリスクはないが、LTCGのHolding periodは通常行使時からカウントされる。
 ③転換権付き社債・優先株→①のリスクはなく、さらにLTCGのHolding periodは社債・優先株発行時からカウントされる(tucked holding period)

・エクイティを保有していることに起因して対象会社の責任を負担してしまうことがある。(①ERISA group liability rules=PEが80%以上の持分を持っているグループの間では、年金関連の負債をすべて相互に連帯して負ってしまう。②Environmental Cleanup=PEがオペレーティング会社をコントロールしている場合はクリーンアップの責任を負うことがある。)

・マネジメントが普通株を購入するに際してNoteを使うことがあるがNewcoがSOX法の適用のあるIssuerの場合(LBOファイナンスの内容としてhigh-yield bondsを公募する場合はこれに該当する)には、SOX法402条のExecutive Loan Prohibitionに該当するので、これを避けるための工夫が必要。

連邦租税法上の効果


(1) 総論

Newcoはasset stepped-up basis (SUB)を取得するようストラクチャーすることを望む。他方、売主は、Inside basisがOutside basisより高い場合には、SUBで取引を組成することに異議を唱えることはないが、Outside basisがInside basisより高い場合(対象会社をもともとプレミアムを上乗せして株式譲渡で取得したような場合)には、より高いBasisを取るためStock saleなどのasset carry-over basis(COB)取引を望むことになる。
  ↓
後者の場合にNewcoがSUBを取るために買収価格を上げるべきか否かは、SUBによるTax benefitの現在価値がいくらかによる。

※ストラクチャーによる相違の例:
・Stock sale with no 338(h)(10) election、Reverse cash merger with no 338(h)(10) election、Reverse two-party cash merger→COB
・Asset sale、Stock sale with 338(h)(10) election、Forward cash merger、Reverse cash merger with 338(h)(10) election→SUB

GAAP上の効果

・Purchase accounting ruleの適用がある場合には、対象会社の資産は新たな簿価(=買収価格+引受債務額+買収コスト)になる。取引の形態がStock dealかAsset dealかMergerかは関係がない。

・FASBの2001年の決定によりGoodwill(暖簾)についてのアモチが廃止された。アモチがあると買収後のAccounting net incomeがその分減ってしまうので、Newcoとしてはアモチのある有形資産・無形資産ではなく、Goodwillになるべく大きな簿価を配分することを望むことに。
by ilovemascarponeR | 2006-05-01 06:38 | Law
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