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2005/11/10 ドイツの司法試験
今週日本では司法試験の合格発表があった。合格者は約1500人。私のときに800人になって合格者が増えたと騒がれていたことを考えると隔世の感がする。合格発表のタイミングはいまだに思い出しただけで胃が痛くなるのだが、法科大学院に多額のお金と時間を投資しないと弁護士になれない新制度の下では、司法試験に受からなかったから人生方向転換というのがますます難しくなるだろうから、たとえ合格率が40%ほどに上がるとはいってもこれから司法試験を受ける人たちはますます胃が痛いことだろう。

2005/11/10 ドイツの司法試験_e0087035_510505.jpgさて、最近ドイツ人とスイス人は日本人とMindが近いということが分かってきてよく一緒に話しているのだが、各国の法曹界事情を聞いていると、日本に似ているところもあり違うところもあるので面白い。たとえば、スイスには金融機関はじめアメリカのクライアントが相当いるにもかかわらず、日本以上に英米系のローファームはほとんど参入しておらず、いくつかある200人規模のDomestic Law Firmsがこれらの仕事をほとんどすべてこなしているらしい。スイスの法律が分かっていないといけないので英米系は参入が難しいそうだが、これは、スイスの法律実務がDomesticな金融規制法中心だからかもしれない。

それから、ドイツの法曹教育システムは大分日本に似ている(日本がドイツのまねをしたというのが正しいのだろうが)。大学卒業後に第1次国家試験(日本の司法試験に相当)を受け、裁判官を養成することを主目的とした司法修習期間が2年ある。この間に何ヶ月かずつ、Court、Prosecutors Office、Counsil、Law Firmを回り、On the job trainingを受ける。月々12万ほどの給料をもらい、研修先のローファームからは法で認められている上限まで追加であと数万円もらえる。近年、裁判官と弁護士の間の人材の流動性が乏しい中ほとんどの修習卒業生は弁護士になるのだから、裁判官養成中心のこの制度はおかしいのではないかということで制度改正が行われたそうだが、ここら辺の議論も日本と同じである。日本と若干違うのは、どのLaw Firmに行くかを自分で探さなければならない点か。この司法修習を終わると、第二次国家試験(日本の二回試験に相当)を受け、晴れて法曹資格をもらうことができる。ただ、この国家試験は順位が出て、この順位によってどのローファームに就職できるか等実質的に将来のすべてが決まってしまうから大変である(日本でも裁判官になる場合は同様だろう)。LLMへの留学は、日本と違い、弁護士になる前に行く場合が多い。また弁護士になる前に専門性を高めるためPhDを取る者もいる。今シカゴに来ている一人のドイツ人は、LLMに加えてPhDも取る予定なので、Law Firmにきちんと就職できるまでに大学を卒業してから5年もかかってしまうそうだ。

フランスも聞いてみたいところだが、残念ながらフランス人はいないんだよなー。
by ilovemascarponeR | 2005-11-10 04:22
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