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Structuring VC/PE/E Transaction III
第三回目のテーマは、NewcoをFlow-through Entity(①S Corporation、②パートナーシップ、又は③LLC)として組成する場合の法律・租税関係について。

各ビークルの総論及び有限責任性

(1) S Corporation

S Corpとは、州法を根拠法して設立されたCorporationのうち、設立後にIRSへのファイリングにより、Internal Revenue CodeのSubchapter Sにより課税されることを選択した会社をいう。

S CorpもC Corp(S Corp selectionをしていないCorporation)と同様、株主は原則として有限責任を享受できる。

(2) パートナーシップ

パートナーシップは、州法・外国法を根拠法として作られる。General Partnership(一般的にFilingが不要)とLimited Partnership(一般的にFilingが必要)がある。

GP、LPいずれの場合も、Corporationのような有限責任性を達成するには以下のような若干の工夫が必要となる。

①GPの有限責任性の達成

GPは、基本的には無限責任なので、これを避けるには次の二通りのスキームが考えられる。
  (i)有限責任法人を間に挟む―LLCかS CorpをGPとして本来GPになるだったはずの者はそのLLCかS Corpの100%保有者になる。
  (ii)LLP(Limited liability partnership)になることを選択する。
    →ただし、これによって有限責任をほぼ満足できる程度に達成できるのは46州のみ。カリフォルニア等では不十分。

②LPの有限責任性の達成

LPでVCであるような場合、パートナーシップを支配しているとしてLPでもGPとみなされてしまう可能性がある。この点、1985年版UCLP(98年まで全州で採択済み)では、Safe Harbor Ruleが設けられており、さらに2001年版UCLPではこのみなしGP制度は廃止されている。

(3) LLC

LLCは州法を根拠法として作られる。連邦租税法上はパートナーシップのように扱われ、それ以外の点ではCorporationのように扱われる。97年までに全州でLLC法が採用され、特に97年のIRSのCheck-the-box Regulationにより、LLCが簡単に連邦租税法上パートナーシップと同様に扱われることができるようになった。

LLCのメンバーは制限責任である。→よって、パートナーシップの場合のようにパートナーの有限責任性を達成するために複雑なストラクチャーを作る必要がない。

なお、LLCについてはまだ判例法が積み重なっていないので、権利義務関係に若干不明確な部分が残っている点は否定できない。

各ビークルの連邦租税法上の取扱い

(1) Flow-throw Entity(S Corp/Partnership/LLC)をC Corporationと比較したときの特徴

・法人レベルでの課税はなく、Equity holderにFlow-throughする。よって、Equity holderに適用される税率(個人の場合、OIは35%、LTCGは15%、法人の場合はいずれも35%)が適用される。

・Newcoは、Equity holderに対して、持分保有から生じる税額に相当する金額を分配するのが一般的。少数Equity holderの場合は、Newcoとの間でMandatory distribution agreementを締結しておくのが望ましい。

・損失も株主にFlow-throughするが、これを控除するには色々制約がある。

・NewcoがEquity holderに利益配当しても配当額についてさらに課税は発生しない。

・Equity holderのNewco持分のBasisは変動する。「Newco持分のBasis=当初のコスト+株主の追加出資額+NewcoのTaxable Income-株主に配当された額-NewcoのTaxable Loss」。よって、Equity holderが株式を売却してもAccumulated gainについて再度課税されることはない。

・Equity holderが当初からのEquity holderで持株割合に変動がなかった場合は、そのEquity holderのNewco持分のBasisは清算における分配額と同じなので、清算に際してさらにGain/Lossを認識することがない。よって、アセット・セールを使ったExitの場合、株主と法人の二重の課税関係を避けつつStep up basisを実現できる。
  ※これに対して、C Corpの場合には、まず法人レベルでアセット・セールのGainが認識され、さらにC Corpの清算にあたって、株主レベルでさらに清算金(税引き後のアセット・セールから得られた代金額)についてGain(通常LTCG)が認識されるので、二重の課税が発生する)。
  ※パートナーシップ・LLCの場合には、もう1つ別の方法として、全パートナー・メンバーの持分を譲渡することでも、Double income taxを避けつつAsset SUBを実現できる。(IRSは買主はAsset saleで資産を買ったものとみなし、他方売主はPartnership interestを譲渡したものとみなすので)

(2) S Corpとパートナーシップ・LLCとの比較

・S Corpは株主について制限がある。他方、パートナーシップ・LLCの場合には"Publicly traded"されていてはならないという以外にこのような制限はない。
 (i)S Corpの株主の数は、100人以内でなければならない。
 (ii)S Corpの株主は、USの個人でなけれならない。
 →従って、Corporation、P、LLCはS Corpの株主にはなれない。
 →VCがこれらの場合には、①債権者又はNewco株を取得する権利(ワラント・転換権)の保有者になるという方法、②S Corpがその下に新たにパートナーシップ又はLLCをつくり、そこにS CorpのビジネスとアセットをDrop downし、そこにVCが投資をするという方法が考えられる。

・S Corpは1クラスの普通株しか発行できない(ただし、議決権が異なるものは出すことができる。他方、パートナーシップ・LLCの場合は、複数クラスの持分を発行することが可能。

・S Corpは368条のTax-free reorganizationを利用できる。他方、パートナーシップ、LLCは不可。

・S CorpのService Providerは、83条の適用に当たり、株式のFVが参照される。他方、パートナーシップ・LLCの場合は清算価値が参照される。

・S Corpの場合、Entityレベルでの負債は、S Corp株主が保有しているS Corp株式のOutside Basisに影響を与えない。他方、パートナーシップ・LLCの場合は、Entityの負債が増えると、Equity ownerのOutside Basisは上がり、Entityの負債が減るとEquity ownerのOutside Basisは下がる。

・S Corpの場合、一定の場合にCorporate-level penalty taxが課されることがある(二重課税の回避の例外)。他方、パートナーシップ・LLCの場合いは、Corporate-level penalty taxは存在しない。

・S Corpの場合、含み益を有する資産を株主に分配すると、株主レベルでGainを認識する。他方、パートナーシップ・LLCの場合、Newcoは含み益を有する資産を何らGainの認識なく(Entityレベルでもパートナーレベルでも)パートナー・メンバーに分配できる。

・パートナーシップ・LLCの場合、IPOに当たってIncorporateすることが必要(なお、Incorporateしなくても持分がPublicly tradedされるようになるとIncorporateしたものとみなされる。)。IncorporationはNegative tax basisを持っていたPartner(損失が投資を上回ってマイナスになっていたパートナー)にGainを生じさせる。

・S Corpよりも、パートナーシップ・LLCの方が、VCとEの間での利益、損失、資産の分配に関してより柔軟な制度設計が可能。
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by ilovemascarponeR | 2006-04-18 09:02 | Law
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